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AIチャット界に旋風を巻き起こすClaude ~ChatGPTを脅かす存在となるか?Anthropic社の野望に迫る~

 生成AIの分野で圧倒的な存在感を示すOpenAIのChatGPTに、新たな強敵が出現した。Anthropic社が開発したAIチャットサービス「Claude」だ。一部のユーザーの間では、すでにChatGPTを凌駕する性能を発揮していると評判になっている。

 ChatGPTの対抗馬として注目を集めるClaude。その実力はいかほどのものなのか。開発元のAnthropicにはどのような思惑があるのか。Claudeの可能性と、今後のAIチャットサービス業界の行方を探る。

ChatGPTスピンアウト組が独自路線で開発

 Claudeの開発元であるAnthropicは、OpenAIから分離独立したスタートアップだ。設立は2021年と日が浅いが、すでにアマゾンとグーグルから巨額の出資を受けている。  OpenAIでは従来の方針に異を唱えるメンバーが独自路線でAI開発を進めるために独立した。彼らはOpenAIとは一線を画し、「憲法的AI」と呼ばれる独自のアプローチでAIシステムを構築している。

 憲法的AIとは、AIに倫理的な価値観や行動規範を持たせることで、人間社会にとって望ましい存在にしていこうという取り組みだ。現状のAIは人間の価値観から外れた判断をすることがあるため、それをシステム的に防ごうという考え方である。

 AnthropicはこのアプローチでClaude(クロード)という対話AIを開発した。OpenAIのChatGPTが汎用的なタスクに対応しているのに対し、Claudeは主にビジネス用途に特化している点が特徴だ。

"自然な文章"で定評あるClaude

 Claudeが話題になったのは、2023年3月に発表されたバージョン3からだ。特に評判となったのが、生成する文章の自然さだ。あたかも人間が書いたかのような滑らかで洗練された文章を紡ぎ出すことから、ChatGPTよりも言語理解が進んでいるのではないかと注目されるようになった。

 Claudeはモデルのサイズに応じて3種類のバージョンが用意されている。小さい方から順に"Haiku"、"Sonnet"、"Opus"と名付けられている。APIとチャットサービスの両方が提供されているが、チャットサービスならSonnetまでは無料で利用可能だ。

 無料の"Claude 3.5 Sonnet"の実力はどの程度なのだろうか。早速使ってみよう。

 まずは日本語で適当に質問を投げかけてみる。すると驚くべき速さで自然な日本語の回答が返ってくる。GPT-3.5よりもはるかに高速だ。言い回しのスムーズさは、GPT-4や他社の大規模言語モデルと比べても引けを取らない。

 次に事前に用意した多言語の文書ファイルをアップロードし、その内容を要約させてみる。するとやはり瞬時に的確な要約が完成する。言語の違いも表記揺れも全く問題にならない。情報量が多くテーマが複雑でも、話の筋が一貫した良質なレポートを生成してくれる。

 ここまでの性能が無料で使えるとは驚きだ。有料プランではさらに高度な機能が使えるようになる。

より大きなモデル"Opus"の真価

 筆者は無料版のSonnetに感銘を受け、すぐに有料契約を行った。現在Opusが利用可能なのはClaude 3までで、より新しい3.5はまだ提供されていない。とはいえ、Claude 3 Opusの性能は折り紙付きだ。

 ベンチマークテストでは、Claude 3.5 Sonnetのスコアが3 Opusを上回っている。映像解析能力の向上が著しく、ライバル他社を圧倒しているという。しかし実際に使ってみると、Opusの真価はむしろ言語理解と知識活用の深さにあることがわかる。

 大量の参考資料を読み込ませた上で質問すると、Sonnetをはるかに凌ぐ洞察力を発揮する。資料と事前学習済みの知識を複雑に関連付けて探索するプロセスがより精緻になっており、核心を突くような鋭い指摘が返ってくる。会話を重ねるほどに賢さを増していき、まるで専門家かマニアのようになっていく。

 また知識の関連付けが深いため、誤った結論を出すことが少ない。ChatGPTではしばしば見られた、話の前後関係を忘れてしまうようなこともない。Claudeは常に文脈をしっかりと把握している。

 こうしてみると、Claude 3.5 Opusがどれだけ進化するのか楽しみでならない。Anthropicは2024年後半のリリースを予告している。

使い勝手を格段に向上させるArtifacts機能

 Claudeのもう一つの魅力は、Artifacts機能による利便性の高さだ。チャット中に作成したコンテンツをワンクリックで呼び出せるため、成果物の管理が非常にスムーズだ。

 例えばプレゼン資料のテンプレート作成を依頼すると、スライドの下書きを別途保存しておいてくれる。コーディングの成果物なら、コードとプレビューを並べて表示する。JSONやSVGの生成も可能で、その場で動作確認ができる。

 また回答の根拠となった箇所を詳細に提示してくれるため、内容の信頼性をその都度確認できる。情報の出所を明確にするのは、AIを活用する上で重要なプロセスだ。

得意分野を見極めて使い分けるのが肝要

 とはいえ、Claudeが全てにおいてChatGPTを凌駕しているわけではない。検索機能や画像生成はChatGPTの方が使いやすい。SVGのようなマークアップ言語は出力できるが、ビットマップ画像は生成できない。

 ChatGPTとClaude、さらには他社のサービスを併用した結果、筆者はChatGPTからClaude派に鞍替えした。ただしユースケースによっては使い分ける必要がある。それぞれのAIの特性を見極め、長所を活かすのが肝要だ。

 AIチャットツールの覇権争いはまだ始まったばかりだ。ChatGPTへの対抗馬として名乗りを上げたClaude。Anthropicのさらなる進化に目が離せない。彼らの独自アプローチがAI業界に新たな風を吹き込むことは間違いないだろう。

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